「頑張って発信してるのに、届かない。選ばれない。続かない」
この壁にぶつかったことがない発信者は、たぶんいない。写メ日記を毎日書いても予約が入らない。ポストのいいねは一桁。プロフィールを何度書き直しても、指名が増えない。
ある美容家の話をする。35年以上にわたり1万人以上の女性の顔と人生に向き合い、50歳で動画配信を始め、登録者40万人を超えたプロデューサー。彼女がウェビナーで語った内容が、女風セラピストのSNS発信にも驚くほど重なっていた。
美容と女風。ジャンルはまったく違う。でも「女性のお客様の感情を動かし、行動してもらうまでの設計」という構造は、ほぼ同じだ。
このコラムでは、彼女の話をもとに、ポジショニングの哲学、コンテンツ設計の仕掛け、コミュニティ運営の思想までを、女風セラピストの発信に置き換えながらお届けする。ツヅルがいつも伝えている「お姫様マーケティング」の実践例として読んでもらえたら嬉しい。
第1章:先生じゃなく「仕掛け人」になれ
彼女が繰り返し語っていたのは、「先生であることはゴールじゃない」という信念だった。
ただ教えるだけの先生ではなく、相手の感情と行動が変わることを意図的に設計する「仕掛け人」になってほしい──36年のキャリアで培われた確信が、その言葉ににじんでいた。
「正直に言うと、ビジネスをやっていると必ず学ばされるのが『人は動かない』ということです。どんなにいい情報をもらっても、どんなに正しいことでも、忙しい、面倒くさい、時間がない。皆さんもそうじゃないですか?」
だからこそ、彼女は**「動かない」という前提で設計する**ようにしたという。
この転換は大きい。多くの発信者は、ノウハウを届けて「なぜ動かないんだろう」と嘆く。彼女はその順番をひっくり返した。
女風セラピストのSNS発信でも、まったく同じことが起きている。「施術の良さを丁寧に書けば、きっと予約が入る」と信じて、スペックや資格やテクニックを並べる。でもお客様は動かない。読んで、「ふーん」で、画面を閉じる。
では、人が動くにはどうすればいいのか。彼女によれば、パターンは2つしかない。
ひとつは**「楽しそう」**という感覚。なんだか楽しそうだな、と思うと人は「やりたい」に変わる。特に、日常から楽しいことが減りがちな女性にとって、楽しそうにしている人の存在は強烈な引力になる。女風のお客様が、セラピストのタイムラインを眺めて「この人の空気、好きだな」と感じる瞬間がまさにこれだ。
もうひとつは**「このままじゃまずい」**という危機感。「これをやると綺麗になりますよ」と言っても人は動かない。でも、「これを放っておくとシミがどんどん大きくなりますけど、いいんですか?」「来月にはもっとたるみますけど大丈夫ですか?」と言われると、「あれ?」と思う。初めて自分ごとになる。
欲求と恐怖。この両方を使って、「言われたからやる」のではなく「やらずにはいられない」状態を作る。それが彼女の言う「仕掛け」の本質だった。
女風の発信に置き換えてみる。「当サロンは完全個室で、アロマも充実しています」はスペック紹介で、お客様の感情は動かない。でも、「最後に誰かに触れてもらったの、いつだっけ」「自分のことを後回しにし続けて、ふと気づいたら心がカサカサになっていた」──そういうポストを読んだとき、お客様は「あれ、私のことだ」と感じる。そこから初めて「行ってみようかな」が生まれる。
「教えてあげる」じゃなく「気づいたら動いていた」状態を作ること。先生じゃなく仕掛け人になること。ここが出発点だ。
第2章:「綺麗になりたい」の意味は、年齢で全然違う
彼女の活動の根幹にあるのは、「自分のための美」という哲学だ。その原点は、長年多くの女性と向き合う中での気づきにあった。
「『綺麗になりたい』という言葉はたくさん聞いてきました。でもこの同じ言葉が、年代によって全然意味が違うことに気づいたんです」
20代、30代の「綺麗になりたい」は、モテたい、可愛く見られたい、周りより綺麗に見られたいという、外に向かった欲求だ。しかし40歳を過ぎると、その意味合いが変わってくる。
40歳を過ぎてくると、気づけばシミが増え、たるみが出て、鏡を見るたびに老けていく現実を突きつけられる。職場では若い世代に押され、おばちゃん扱いされる。家では子育てに奔走しているのに優しくされなくなる。親の介護も入ってくる。気づいたら、真面目に一生懸命やってきたからこそ、自分のことをどんどん後回しにし続けている。ふとした瞬間に鏡を見た自分にがっかりして、「このまま私、終わっちゃうんだろうか」と思う。
「人生を折り返す40歳で発せられる『綺麗になりたい』は、外見の話じゃないんです。『変わりたい』『このままで終わりたくない』という心の叫びが凝縮されている言葉なんだと思います」
この構造、お姫様マーケティングとまったく同じだ。
女性のお客様が女風を探すとき、「性的なサービスがほしい」だけじゃない。もちろんそういう方もいる。でもかなりの割合で、その奥にあるのは「自分を取り戻したい」「誰かに大事にされたい」「このまま枯れていく自分を、どうにかしたい」という心の叫びだ。触れてほしい、でも寂しいとは言えない──『女風をめぐる物語』で綴っているのも、まさにその声にならない声のことだ。
彼女の言葉を借りれば、それは外見の話じゃなくて、生き方の話。
ここに気づけるかどうかで、セラピストのポジショニングが根底から変わる。「施術が上手い人」から「人生に寄り添ってくれる人」へ。若さや流行を追う美容ではなく、年を重ねたからこそ人生に寄り添う美容。外見を整えるテクニックだけではなく、その奥にある人生ごと、思いを受け取る覚悟を持って仕事をする。それが「自分のための美」という哲学の核心だった。
彼女はこうも指摘する。
「今はAIがどんどん発達して、聞けば何でも出てきます。でも私たちの人生や生き方は、AIには経験できない。同じ技術、同じ知識でも、経験してきた人の言葉は違う。良いことも悪いことも、自分の嫌なところもドロドロしたところも全部含めた状態で受け止めてあげられる。その人間臭さこそが、これから生き残るために必要なことだと思うんです」
女風セラピストにとって、これは痛いくらい刺さる言葉だろう。テクニックや施術メニューはマネできる。でも、そのセラピストが生きてきた時間、抱えてきた感情、乗り越えてきた経験は、絶対にマネできない。
お姫様マーケティングで「魔法」と呼んでいるもの、つまり女性が「この人に触れたら何か変わりそう」と感じる予感は、スペックからは生まれない。その人の人間臭さから生まれる。
美容業界はレッドオーシャンだと言われる。女風も同じだ。セラピストは増え続けていて、スペック比較では差がつきにくくなっている。でも彼女が戦っているのは「美容業界」という土俵ではない。人の生き方や人生という、もっと深い場所にポジションを築いている。美容はあくまで手段。それが独自性につながっている。
女風セラピストも同じ構造を作れる。施術は手段。本当に提供しているのは「自分を取り戻す時間」であり「大事にされる体験」だ。そこにポジションを築けば、スペック比較の土俵に乗らなくて済む。
第3章:「美を積み重ねる」──一瞬ではなく、生き方ごと変える
「自分のための美」を日常で実践できる形に落とし込んだのが、彼女独自のメソッドだ。「美を積み重ねていく」という意味を込めた名前がついている。
「40歳からの外見美は、メイクだけでは成り立ちません。一瞬だけ綺麗にすることはできる。でも一瞬だけ綺麗でいいのか、というところに入ってくると思うんです。私たちの年代は、肌、筋肉、姿勢、生活習慣、それが全部外見に影響してきます」
彼女のメソッドはただやり方を教えるのではなく、まず自分のことを「観察する」ことから始める。顔の専門家として、東洋医学の望診を用いて、顔に現れる体の状態、生活習慣、思考の癖を読み解く。なぜ今その悩みが起きているのかという原因、どう変えていけばいいのかという方法、どうすれば続けていけるかという習慣。この三つを一人ひとりに合わせて整えていく。
「年を重ねた顔は武器になる」──彼女が動画で7年間言い続けてきた言葉だ。日々の中で美を積み重ねていくことで自分の価値が上がり、自信がつき、生き方そのものが変わっていく。すると、それが顔に現れる。無理にニッコリするのでもなく、一生懸命マッサージするだけでもなく、自分の生き方で楽しそうな顔をしていたら、自然と顔は引き上がってくる。
これ、女風の文脈で読み替えると非常に示唆深い。
「一回の施術だけで満足させる」のではなく、「その人の生き方ごと変わっていく」ような関わり方。お姫様マーケティングで言う「じわじわ効く魔法」の設計だ。一回の施術は入り口にすぎない。その後の写メ日記やSNSのフォローアップで、お客様が「自分のために時間を使うこと」を習慣にしていく。そうやって「美を積み重ねる」のと同じ構造で、お客様の人生に自然と入っていける。
そして彼女は、この思想を広げるために認定講師の協会を設立した。美容のパーソナルトレーナーを育成し、一人では続けにくい変化の道のりに寄り添い、「一緒に綺麗になりながら、みんなで人生を楽しく生きましょう」というコミュニティを形成している。
一人じゃ続かない。だから一緒にやる。この仕組みは、セラピストとお客様の関係にもそのまま当てはまる。
第4章:コンプレックスこそ最強のコンテンツになる
彼女のコンテンツ哲学の中で、ひときわ印象に残ったのがこの考え方だ。
「完璧って、選ばれないと思っています。いつの時代も、隙のない美人って距離を感じませんか?」
彼女は、自分の老化の変化や更年期の悩み、介護のこと、自分のモヤモヤした気持ちをリアルに開示するようにしたという。最初は怖かった。すっぴんを見せることも、自分のドロドロした感情を話すことも、「受け入れてもらえないかもしれない」と不安だった。
しかし実際に話してみると、反応は予想を超えるものだった。「私だけじゃなかった」という声。「この人がこんなに大変な時にこんなに変わっていたなら、私も変われるかも」という声。「本当に分かってくれるんだ」という声。コメント欄があふれた。
「人は正しさでは動かない。でも共感では動いてくれるんです」
普段コメントをしない人までもが、彼女が自分のことを語った瞬間にコメントを書き込んでくる。正しいことをずっと伝えていると「良かったです」「いいね」で終わる。しかし自分の全てをさらけ出した時に生まれる共感は、信頼へと変わっていく。それは完璧さや隠し事からは絶対に生まれないものだ。
コンプレックスやリアルな老化の悩みこそが最強のコンテンツになる。同じ悩みを持つ人だからこそ、教える人ではなく一緒に変わっていける仲間になれる。それがコンテンツとして、自分だけが頑張って広げなくても自然と広がっていく力を持つ。彼女はこの自己開示こそが最大の武器だと確信している。
ここが、女風セラピストの発信で最も活かせるポイントだと思う。
SNSで完璧な自分を演出しようとするセラピストは多い。写真は加工し、言葉は磨き上げ、弱みは見せない。でもそれは「隙のない美人」と同じで、距離を感じさせるだけだ。
お姫様マーケティングの言葉で言えば、女性のお客様が求めているのは「完璧な施術者」ではなく「自分のことをわかってくれる人」。スペックが高い人ではなく、共感できる人。
だから、自分の弱さ、不完全さ、悩んできた過去をポストに書く。「自分も人との距離感がうまくつかめなかった時期がある」「心がカサカサになって、誰かに触れてほしいと思ったことがある」──そういう自己開示が、お客様の「この人なら、わかってくれるかもしれない」を引き出す。人見知りで、話したい気持ちはあるのに声に出せない。そんな女性の気持ちに寄り添うサービスは女風以外にも存在するけれど、共通しているのは「わかってくれる人がいる」という安心感が入り口になるということだ。
「美容業の方って、自分が綺麗じゃないと教えちゃいけないとか、なぜかハードルをすごく上げてしまう方が多いんです。でも、素敵な年の取り方や、自分の幸せの顔はどういう顔なのか、そこにフォーカスしていかないと、教えている側もしんどくなってしまうし、続かない」
女風セラピストも同じだ。「完璧な自分」を演じ続けると、しんどくなるし、続かない。一緒に上がっていけばいい。やってきた年月、経験してきたこと、一生懸命やってきたことは簡単には埋まらない。だから一緒にやって抜かされることはない。一緒に上がっていく。その姿勢が、結果的にいちばん選ばれるポジションを作る。
第5章:コンテンツ設計の基本形──共感・発見・行動の三段構造
彼女がコンテンツや商品、サービスを企画設計する際にまずやることは、「誰の、どんな悩みに、どう寄り添うのか」を徹底的に考えることだという。一度作ったコンテンツであっても、「本当に合っているのか」と常に問い直す。いきなり答えを出すのではなく、先に問いを立てることを大事にしている。
そしてコンテンツ設計で最も重視しているのが**「感情の変化」**だ。具体的には三つのステップで組み立てる。
第一に、共感。自分や周りの人が「こんなことに困っています」「皆さんはどうですか?」と投げかけることで、相手の心に入っていく。
第二に、発見・気づき。「こんな見方があるんだ」「こんなことだったのか」という驚きや新しい視点を提供する。
第三に、行動したくなる気持ち。「それなら私もできるかもしれない」「やってみたい」という気持ちにまで導いていく。
たとえば、「40代のメイクはこうやると綺麗になります」といきなり答えを出すのではなく、「去年と同じメイクをしたのに、なぜか老けて見える時ってありませんか?」と問いかける。同じ化粧品を使っているのに、なぜかしっくりこない。服でも同じだ。去年着ていた服が、今年はなんだかイケていない。「なんでだろう?」と一瞬考える。その瞬間に、自分ごとになる。
そこから「原因はここです。こう変えると一気に変わりますよ」と伝えていくと、ただの情報が「やってみたい」に変わる。コンテンツの最後には必ず次のアクションを自然に組み込む。今すぐやってみることでもいいし、講座やコミュニティへの一歩でもいい。ただ見て終わりではなく、「気づいたら動いていた」という状態を作ること。それが彼女のコンテンツ設計の基本形であり、仕掛け人としての腕の見せどころだ。
この三段構造、女風セラピストの写メ日記やSNSポストにそのまま使える。
たとえば写メ日記で、いきなり「当サロンではアロマトリートメントで全身をほぐします」と書くのは、答えから始めている。そうじゃなくて、「最近、朝起きた時に体が重くて、誰かに『大丈夫?』って聞いてほしいのに、聞いてくれる人がいない。そんなことありませんか?」と書く。これが共感だ。
次に、「実はその重さ、筋肉の疲れだけじゃなくて、『触れられていない時間』が長すぎるせいかもしれません」と発見を差し出す。
そして最後に、「自分のために、ほんの数時間だけ大事にされる時間を作ってみませんか」と行動を促す。
共感→発見→行動。この順番を守るだけで、「読まれて終わり」のポストが「予約につながる」ポストに変わる。この三段構造の具体的な書き方や実例は、ツヅルの発信講座で詳しく解説している。
お姫様マーケティングで言う「他人事テクニック」とも完全に一致する。正面から「あなた疲れてますよね?」と突きつけるのではなく、共感から入って、お客様が自分で気づく導線を設計する。動かない前提に立って、どう動くのかという仕掛けをちゃんと作っていくことが大事だという、彼女の言葉そのままだ。
第6章:コミュニティの設計思想──年を重ねるほど価値が上がる仕組み
彼女が協会を立ち上げたきっかけは、コロナ禍だった。一気に社会が変わり、変化に弱い年代の女性たちが気持ちも体もついていけなくなり、どんどん元気をなくしていった。その姿を見て、「このままじゃいけない。オンラインでも活躍できる場所を作ろう。年を重ねた女性でも輝ける場所を広げていこう」と決意した。
多くの女性がモヤモヤを抱えていた。何かしたい、誰かのために役に立ちたい、でも自信がない。その根底にあるのは「自信のなさ」だった。
だからこそ、認定講師の制度を設計する際に彼女が大切にしたのは三つの柱だ。
一つ目は、自分が綺麗になっていくこと自体が仕事になっていくという構造。「綺麗になったから仕事になる」のではなく、「綺麗になるその過程が仕事になっていく」という点が重要だ。
二つ目は、自分の変化が人に希望を与えているという実感を持たせること。
三つ目は、年齢や経験がそのまま価値になるという確信を育てること。
この三つを軸に、コミュニケーション能力を磨き、人と関わる力を一緒に育てていく。年を積み重ねることによって価値が上がっていく仕組みを作りたかったのだという。
「年齢がどんどん上になっていくと、『私って働けるのかな』と老後の不安を感じる。その気持ちは自分でもよく分かっていました。でも動画配信を始めた50歳の転換期に、今まで考えたこともなかったチャンスが広がっていった。年を重ねて落ち込んでいくより、上がっていく方が絶対楽しいですよね」
そして彼女は視野をさらに広げる。
「自分だけが上に上がっても楽しくない。80歳になった時に、一緒にご飯を食べよう、遊びに行こうって言った時に、元気な人がいないとつまらないじゃないですか」
自分たちのような世代がどんどん元気になっていけば、若い世代にとっても希望になる。楽しそうなおばあちゃんたちがいっぱいいる世の中になれば、全体が幸せになるんじゃないか。
この考え方は、女風セラピストのSNS発信の「世界観づくり」にそのまま転用できる。
お姫様マーケティングでは、「売り手と買い手」の関係から「私たちの関係」へ移行することがファン化の鍵だとしている。彼女の協会がやっているのはまさにこれだ。「先生と生徒」ではなく、「一緒に綺麗になっていく仲間」。「サービス提供者とお客様」ではなく、「同じ価値観を共有するコミュニティ」。
女風セラピストのタイムラインも、単なるサービスの宣伝の場ではなく、「この人のまわりにいると、なんかいい感じ」と感じてもらえる空間にすることが目標になる。そしてその空間に長くいてくれた人ほど、リピーターになり、口コミを広げてくれる。
「年を重ねるほど価値が上がる」という仕組みは、セラピスト自身のキャリアにも当てはまる。経験を積んだセラピストの方が、お客様の心の機微を読み取れる。若さだけでは出せない安心感がある。それをちゃんと発信の中で見せていく。「経験」を「年齢のハンデ」ではなく「武器」として言語化していくこと。それが長く選ばれ続けるための導線になる。
第7章:ノウハウの流出を恐れない理由
協会運営をしていると、「ノウハウが流出して困る」という相談をよく受けるという。しかし彼女の考え方は真逆だ。
「真似できるならいくらでも真似していいと思っています。AIだってそうでしょう? 知識なんてポンポン出てくる。そうじゃなくて、本当の目的は、生涯元気で活躍できる女性を世に送り出すこと、増やすことなんです」
経済的にも精神的にも自立した女性が増えれば増えるほど、社会はもっと明るくなっていく。だからノウハウの流出を恐れる必要はない。自分が進化し続ければいいだけの話だ。
この考え方の原点には、美容師時代の経験がある。惜しみなく技術を教えてくれる先輩がいた。その先輩は「人に教えることで自分も覚える。だから教えることがすごく大事なんだ」と言い、「恩を受けたら、その人に返そうとするだろう。でも自分より器の大きな人には返せない。だったら、自分がやってもらったこと、ためになったと思うことは下に流せ」と教えてくれた。
恩は上には返せない。だから下に流す。流された側がまた下に流す。そうやって循環していけば、全体が幸せになっていく。ノウハウを囲い込むのではなく、世の中のために惜しみなく差し出していくと、ブーメランのように色々なものが帰ってくる。人のおかげで成り立っている──彼女のコミュニティが持つ温かさの源泉は、この循環の思想にある。
ウェビナーの司会者も鋭く指摘していた。「ノウハウの流出が怖い人は、仕掛けのデザインがないからではないか。ノウハウだけでやっているから、それを取られると困ってしまう。仕掛けのデザインがあれば、ノウハウなんていくらでも出せる」と。
これは女風セラピストの発信にも完全に当てはまる。
「自分の施術テクニックを写メ日記に書いたら、マネされるんじゃないか」と心配するセラピストがいる。でもそれは、テクニックだけが武器だから怖いのだ。テクニックの奥にある世界観、お客様との関わり方の設計、自分の人間臭さから生まれる共感──そこまで含めた「仕掛け」があれば、テクニックだけマネされても痛くない。
むしろ、惜しみなく出す姿勢そのものが信頼を生む。「この人は出し惜しみしない」「この人のまわりにいると、いいことがある」──そう感じてもらえたら、お客様は離れない。
お姫様マーケティングで「私たちの関係」と呼んでいる段階に到達したお客様は、セラピストのノウハウがマネされても困らない。なぜなら、選んでいる理由がノウハウではなく「この人の世界観が好き」だからだ。
おわりに:「自分のための美」を、あなたの発信に宿す
彼女の話を貫いているのは、一貫した思想だ。
人は動かないという前提に立ち、楽しさと危機感で感情を揺さぶる仕掛けを設計する。美容という入口から、人生そのものに寄り添うポジショニングを築く。完璧さではなくコンプレックスを武器にして、共感で人を動かす。ノウハウを囲い込まず、循環させることでコミュニティを育てる。
「誰かのための綺麗」ではなく「自分のための美」。この言葉は、美容の話に見えて、実はすべての対人サービスに通じるメッセージだ。
女風のお客様もまた、「誰かのために頑張る自分」を一度おろして、「自分のために大事にされる時間」を求めてサービスを探している。その心の叫びに気づけるかどうか。自分の発信で、その叫びに応えられるかどうか。その声にならない声を物語として記録しているサイトを読むと、お客様の内面がもっとリアルに見えてくるかもしれない。
見た人が自然に行動したくなるコンテンツの作り方を、できるだけシンプルに──彼女はそう言っていた。「私にもやれそうかな」と思ってもらえたら嬉しい、と。
そのウェビナーそのものが、まさに人を動かす仕掛けの実践だった。
そして今度は、あなたのSNSのポストが、その仕掛けになる番だ。
スマホの向こうにいる女性が、あなたの言葉を読んだあと、ほんの少しだけ「行ってみようかな」と思えるか。
その一点を外さなければ、言葉はちゃんと届く。